PEOPLE
グローバルワークプレイス事業本部
商品企画 | プロダクトエンジニアリングコース
市川 夏子 2021年新卒入社
その「良さ」は、
相手に届く「良さ」なのか?
市川夏子の好奇心は、想像力のカタチで現れる。自分が開発した商品は、顧客にどんなふうに喜んでもらえるだろう?つくる人にとってのつくりやすさは?売る人にとっての売りやすさは?想像する。バリューチェーン全体に思いを巡らせ、見えないところがあるなら知りたいと思う。
想像しきれずに失敗したことがあります。2年目で手がけた、天井から吊り下げるタイプの吸音材の開発でした。コクヨとして前例のないタイプの商品だったので、通常使用する設計・製造のチェックリストが適用できず開発は難航しました。最大の課題は、運用と納品プロセスの検討不足でした。設置するには天井の耐荷重などを調べる必要があり、それが私の考えていた以上に営業の負担だったんです。運用と納品にかかる手間の大きさが私の頭になく、結局それがネックで商品は世に出ませんでした。
以来、市川は自分以外の職種が請け負っているフェーズにも興味を持つようになった。営業の勉強会に参加しては、彼らがどんなふうにお客様に接しているか、提案から納品までどんな仕事をしているか学ぶ。へぇ、こんな制約があるんだ。じゃあ私はこういうところに気をつけなきゃ。え、こういうところが営業にとっての提案のしやすさだったんだ。
“営業と開発の視点の違い”でよく覚えているのが、新人の頃、先輩のサポートとして開発に携わったソファーです。厳しいコスト制約の中、ベストを尽くしつつも素材の質感やスマートさなど、プロダクトの完成度がどう評価されるか気になっていた商品でした。ところがその商品には“背もたれや肘掛けを付け替えることができる”という大変アイコニックな機能があって、営業目線ではそれが非常にお客様に伝えやすい価値だったんですよね。“替えられる”というコンセプトが市場に刺さったのもあり、そのソファーはヒットしました。開発はつい玄人目線になりがちで、完成度やディテールにこだわりたくなるのですが、営業の言葉で価値を届けてもらえるかというのもとても大事なんです。
人に聞いても答えはない。
とことん自分で考えてみる。
仕事にブラックボックスをつくらず、分からないことは調べ、他職種にも聞きにいく。そんなスタイルが板についてきた5年目の市川の前に、新たな難問が立ちはだかった。マルチテーブル「オプト」の企画である。ターゲットは広く、デザインもベーシック。そのうえで新規性も求められた。
実は同じカテゴリーのワークテーブルをコクヨは既に出していて、そっちで顕在化している問題は特になかったんです。だから余計に難しくて。
既存品に問題があるならそれを解決したバージョンを出せばいいのだが、営業に聞いても特段困り事はないという。さあどうする。市川はヒアリングを継続しつつ、他のメンバーと共に既存品やプロトタイプを使って検証を繰り返し、「全く新しいテーブル」として商品を生み出す新鮮な切り口を探した。そして、「こんなところで困っているんじゃないか?」という仮説を立て、仮説をもとにブラッシュアップした試作を用意。それを営業に持っていった。
例えば「電源はこう取り付けたほうが、アクセスしやすく見栄えも良いのでは?」と見せてみたら、「ああ、それはそうだね!」と反応が。キャスターひとつとっても、改善の余地があるとはだれにも思われていないところに、実際にとても綺麗な造作のキャスターを取り付けて並べて見せたら「あ、こんなこともできるんだ。それならいいね」と言ってもらえました。
スピードが求められる企画だった。要件を決める段階では1カ月間毎週大阪に通い、開発メンバーと話し合いを重ねた。試作の改良も手早く迅速に。結果、キックオフからわずか11カ月で完成に至らしめた。社内のお披露目会ではノイズレスなデザインが高く評価された。シンプルながらも細部まで既製品を使わず、自社開発パーツで仕上げたこだわり、そして運用のしやすさ。市川の5年間の学びが詰め込まれていた。
コクヨは、
手探りのできる大企業。
部活のTシャツ、運動会の旗、お菓子、友人が書いた小説のカバー。これらはすべて、市川が子どもの頃からだれかのためにつくったものだ。何をつくるかに執着はあまりない。相手が喜ぶことが大事。
コクヨに出合えたのはラッキーだったと思っています。コクヨは画期的な技術やソリューションで「ついてこい!」というような商品ではなく、人に寄り添って、痒いところに手が届くような商品をつくる企業。自分の価値観と似ています。大企業の割には手探りで仕事ができる楽しさがあるのも魅力です。仕事自体は結構泥臭い一方で、大企業だからこその投資をしたものづくりもできる。そのバランス感が面白いんじゃないかな。
2026年4月現在、市川の目線は海外に向けられている。グローバルに商品の価値を届けられる体制づくりや、具体的な商品戦略が今の市川の担当だ。
開発出身者として、コクヨはすごく丁寧にいいモノをつくっている会社だと自負しています。でも残念ながらグローバルにはあまり知られていません。モノとして後れをとっているわけじゃないのだから、きちんと提案して正しくターゲットを絞っていけば、もっと幅広く世界中の人に使ってもらえるんじゃないかと思います。
鍛えてきた想像力は、海を超えていけるか。手探りを始めたばかりの市川に現時点での感触を聞いたところ、まさに今ぶつかっている課題について教えてくれた。
「人に寄り添う」コクヨなのに、寄り添うべきお客様が物理的に遠くにいると、観察が難しくなるんですよね。この「顧客像のはっきりしなさ」をどう乗り越えるか、試行錯誤しています。でもこういうリサーチからゼロベースでやらせてくれる泥臭さも、コクヨらしくていいなと思っています。